「レチノール美容液」と一括りにされがちですが、実際に成分表を見ると、
といった疑問が出てきます。この記事では、CosmeScopeに登録されているレチノール系美容液5本を取り上げ、配合されているレチノイドの種類(純粋レチノール・レチナール・誘導体・バクチオール)と処方タイプ(オイルベース・水系セラム)という2つの軸から、成分表とスコアをもとに客観的に比較します。
成分データ確認日: 2026-07-11
「レチノール系成分」とひとくちに言っても、化粧品に配合される形はいくつかの種類に分かれます。
| 分類 | 代表的な成分 | 一般的に知られる位置づけ |
|---|---|---|
| 純粋レチノール | レチノール | ビタミンA本体。効果が期待される一方、不安定で刺激につながる可能性が指摘されることがある成分として知られる |
| レチノール誘導体(エステル型) | パルミチン酸レチノール、水添レチノールなど | レチノールを安定化させた形とされ、比較的穏やかとされることが多い |
| レチノイン酸系誘導体 | レチノイン酸ヒドロキシピナコロン、レチノイン酸トコフェリルなど | レチノイン酸に近い構造を持つとされる誘導体成分 |
| レチナール(レチンアルデヒド) | レチナール | レチノールより肌内での変換段階が少ないとされる成分として紹介されることが多い |
| バクチオール | バクチオール | 植物由来で、レチノールと似た文脈で語られることがある成分。構造はレチノイドとは異なる |
なお、純粋レチノールは2017年以降、日本でも医薬部外品の有効成分として承認された実績がありますが、今回比較する5本はいずれも医薬部外品ではなく化粧品として販売されている商品です。化粧品としてのレチノール配合は、承認された効能を標榜するものではなく、成分としての配合を示すものにとどまります。医薬部外品と化粧品で標榜できる範囲がどう違うかは医薬部外品と化粧品の効能範囲の違いで詳しく整理しています。
2026年7月時点でCosmeScopeに登録されている商品の中から、価格帯・処方タイプがばらける5本を選びました。
| 商品 | 価格 | 処方タイプ | 配合されているレチノイド系成分 |
|---|---|---|---|
| KISO スーパーリンクルセラム VA | 1,630円 | 水系セラム | レチノール、レチノイン酸ヒドロキシピナコロン、レチノイン酸トコフェリル、パルミチン酸レチノール、水添レチノール、レチノイルヒアルロン酸Naの6種 |
| COSRX RXザ・レチノール0.5オイル | 2,600円 | オイルベース | レチノール(単独) |
| SOME BY MI レチノール インテンス リアクティベーティング セラム | 2,530円 | 水系セラム | レチノール、レチナール、バクチオール |
| innisfree レチノール シカ リペア セラム | 880円 | 水系セラム | レチノール(単独) |
| キールズ DS RTN リニューイング セラム | 9,900円 | 水系セラム | レチノール(単独、マイクロドーズ設計) |
| 商品 | 総合 | うるおい | やさしさ | 刺激感への配慮 | 成分品質 | なじみやすさ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| KISO スーパーリンクルセラム VA | 4.2 | 5.0 | 4.1 | 4.3 | 3.8 | 5.0 |
| COSRX RXザ・レチノール0.5オイル | 4.1 | 5.0 | 4.6 | 4.7 | 5.0 | 5.0 |
| SOME BY MI レチノール インテンス リアクティベーティング セラム | 4.1 | 5.0 | 4.8 | 4.8 | 3.7 | 5.0 |
| innisfree レチノール シカ リペア セラム | 4.3 | 5.0 | 4.8 | 4.9 | 4.4 | 5.0 |
| キールズ DS RTN リニューイング セラム | 4.0 | 5.0 | 4.8 | 4.3 | 3.1 | 5.0 |
※スコアはCosmeScope独自の成分構成の分析に基づく成分傾向の数値化であり、使用感や肌相性とは別軸の指標です。太字は各項目の最高値を示します。
KISO スーパーリンクルセラム VA(全成分32) 全成分:水、グリセリン、プロパンジオール、ペンチレングリコール、レチノール、レチノイン酸ヒドロキシピナコロン、レチノイン酸トコフェリル、パルミチン酸レチノール、水添レチノール、レチノイルヒアルロン酸Na、水添レシチン、アセチルヒアルロン酸Na、ヒアルロン酸クロスポリマー-2-Na、加水分解ヒアルロン酸Na、ヒアルロン酸Na、ピーナッツ油、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ツボクサエキス、オウゴン根エキス、イタドリ根エキス、カンゾウ根エキス、チャ葉エキス、ローズマリー葉エキス、カミツレ花エキス、キサンタンガム、BG、エチルヘキシルグリセリン、ポリソルベート20、カルボマー、水酸化K、ホウケイ酸(Ca/Na)、酸化銀 配合順5〜10位に、純粋レチノールとレチノイン酸系誘導体・エステル型誘導体をあわせて6種類のレチノイド系成分が連続して配置されています。単一のレチノールだけでなく、複数の誘導体を組み合わせている点が処方上の特徴です。
COSRX RXザ・レチノール0.5オイル(全成分10) 全成分:スクワラン、ダイズ油、リンゴ酸ジアルキル(C12,13)、レチノール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、BHT、トコトリエノール、トコフェロール、パーム油、ヒドロキシメトキシフェニルデカノン 全成分10種というシンプルな処方で、水を含まないオイルベースです。レチノールは配合順4位。スクワランやダイズ油などの油分が前方を占め、BHT・トコフェロール・トコトリエノールという酸化を抑える働きが知られる成分が後続に配置されています。成分品質スコアが5.0と5本中最高値です。
SOME BY MI レチノール インテンス リアクティベーティング セラム(全成分65) 全成分:水、シクロヘキサシロキサン、炭酸ジカプリリル、グリセリン、メチルプロパンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ナイアシンアミド、水添ポリ(C6-14オレフィン)、パンテノール、酢酸トコフェロール、カバ葉/根/茎エキス、ツボクサエキス、オタネニンジン果実エキス、カンゾウ根エキス、イチジク果実エキス、ツボクサ葉エキス、ツボクサ根エキス、ティーツリー葉エキス、カワラヨモギエキス、タカサブロウエキス、メリアアザジラクタ葉エキス、パーム油、水添レシチン、ステアリン酸グリセリル、バクチオール、パルミチン酸、ポリアクリル酸Na、ステアリン酸、キサンタンガム、レチノール、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、BG、グリチルリチン酸2K、アデノシン、トロメタミン、ポリクオタニウム-51、β-グルカン、セタノール、BHT、コラーゲン、ミリスチン酸、BHA、ロイコノストック/ダイコン根発酵液、トコフェロール、ビフィズス菌培養溶解質、セラミドNP、サッカロミセス培養物、レチナール、アシアチコシド、ポリメタクリル酸グリセリル、マデカッソシド、PG、オレイン酸ポリグリセリル-10、糖脂質、ダイズペプチド、レスベラトロール、ジステアリン酸スクロース、アシアチン酸、マデカシン酸、パルミトイルトリペプチド-1、ワサビノキ種子油、ステアリン酸PEG-100、ポリソルベート20、香料、エチルヘキシルグリセリン 65成分と5本中最も多い処方です。興味深いのは配合順で、バクチオールが25位、レチノールが30位、レチナールが48位と、実はバクチオールがレチノールより前方に配置されています。レチノール・レチナール・バクチオールという3種のレチノイド系(およびレチノイド様)成分を段階的に組み合わせた設計と読み取れます。
innisfree レチノール シカ リペア セラム(全成分34) 全成分:水、BG、ナイアシンアミド、1,2-ヘキサンジオール、ツボクサエキス、レチノール、ツボクサ葉エキス、アシアチコシド、アシアチン酸、マデカシン酸、ヒアルロン酸Na、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸K、ヒアルロン酸クロスポリマーNa、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム、加水分解ヒアルロン酸、加水分解ヒアルロン酸Na、アセチルヒアルロン酸Na、エリスリトール、アルギニン、アラントイン、オリーブ果実油、シア脂、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、水添レシチン、スクワラン、エチルヘキシルグリセリン、アデノシン、ダイズ油、オウレン根エキス、セラミドNP、コレステロール、フィトスフィンゴシン、ビフィズス菌培養溶解質 レチノールは配合順6位(全34成分中)と、5本の中でも前方に位置しています。880円という価格帯ながら、レチノールが上位に配合され、CICA由来成分(ツボクサエキス、アシアチコシドなど)やヒアルロン酸系成分を多数併用した設計です。
キールズ DS RTN リニューイング セラム(全成分43) 全成分:水、グリセリン、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ナイアシンアミド、セチルアルコール、イソヘキサデカン、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、2-オレアミド-1,3-オクタンデカンジオール、4-T-ブチルシクロヘキサノール、アセチルジペプチド-1セチル、アデノシン、セラミドNP、ヒドロキシパルミトイルスフィンガニン、ラウロイルリシン、オクチルドデカノール、ペンタエリスリチルテトラ-ジ-T-ブチルヒドロキシヒドロシンナメート、塩化ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリスodiumエチレンジアミンジスクシネート、レチノール、トコフェロール、ジカプリリルエーテル、ポリアクリロイルジメチルタウリンアンモニウム、ベヘニルアルコール、カプリリルグリコール、カルボマー、セテアリルアルコール、セテアリルグルコシド、ダイズ油、ヒマワリ種子油、ヒドロキシエチルセルロース、レシチン、フェネチルアルコール、ポロキサマー188、ポリカプロラクトン、ソルビタンラウレート、ステアレス-100、β-カロチン、クロルフェネシン、フェノキシエタノール レチノールは配合順23位(全43成分中)と、5本の中で最も後方です。ナイアシンアミドやセラミドNPが前方に配置され、レチノールを少量ずつ配合する「マイクロドーズ」という設計思想を訴求するブランドの処方と一致する並びです。9,900円という価格帯には、こうした処方設計や複数の保湿・整肌成分の併用も関わっていると考えられます。
5本を並べると、同じ「レチノール美容液」でも、配合されているレチノイドの種類と数が大きく異なることが分かります。COSRXやinnisfree、キールズはレチノール単独ですが、KISOは純粋レチノールにレチノイン酸系誘導体・エステル型誘導体を加えた6種類、SOME BY MIはレチノール・レチナール・バクチオールの3系統を組み合わせています。
これは、純粋レチノールが効果を期待される一方で、光や空気で分解されやすく、肌への刺激につながる可能性が指摘されることがある成分として知られていることと関係していると考えられます。誘導体やバクチオールを組み合わせる処方は、安定性や肌あたりのバランスを取るための設計のひとつと考えられますが、「誘導体だから刺激がない」「種類が多いほど良い」と単純化できるものではありません。オイルベースのCOSRXのように、レチノール単独でもシンプルな油性成分だけで構成する設計もあり、処方の考え方はブランドによって様々です。レチノール配合美容液全般の刺激への配慮についてはレチノールと刺激の関係、成分の配合濃度の考え方は配合濃度の読み解き方でも解説しています。
COSRXはスクワランやダイズ油を基剤とするオイルベースで、水を含まない処方です。水系セラムに比べて成分数が少なく、油分同士でレチノールを溶かし込む設計のため、化粧水の後になじませるステップとして使われることが多いタイプです。一方、KISO・SOME BY MI・innisfree・キールズは水をベースとした水系セラムで、ヒアルロン酸やナイアシンアミドなど親水性の保湿・整肌成分を併用しやすいという違いがあります。どちらが優れているというものではなく、後述するテクスチャーの好みや使用順序との相性で選ぶポイントになります。
レチノール系成分は、使い始めに乾燥や皮むけを感じる場合があることが知られています。特に純粋レチノールを高い配合順位で含む処方(KISO等)は、レチノールが主体の処方であるため、初めて使う場合は少量から試すことが選択肢になります。ナイアシンアミドと併用した処方(KISO、SOME BY MI、キールズ)は、レチノールとナイアシンアミドの関係についてナイアシンアミドとレチノールの違いでも整理しています。夜間のケアに取り入れ、日中は紫外線対策を行うといった基本的な使い方の工夫も、レチノール系成分を検討する際の一般的な留意点として知られています。
肌質や使用経験には個人差があるため、上記はあくまで成分構成からの検討材料としてご覧ください。
Q. レチノールとレチナールはどちらが刺激が強いですか? A. 優劣や強弱を断定することはできません。レチナールはレチノールより肌内での変換段階が少ないとされる成分として紹介されることがありますが、配合濃度や併用成分によって処方全体の性格は変わるため、成分表全体を確認することをおすすめします。
Q. バクチオールがあればレチノールは不要ですか? A. バクチオールはレチノールと似た文脈で語られることがありますが、構造が異なる別の成分です。SOME BY MIのように両方を組み合わせる処方もあり、どちらか一方が不要と断定することはできません。
Q. プチプラのレチノール美容液でも十分ですか? A. 「十分かどうか」は成分表だけでは判断できません。今回のinnisfreeのように、880円という価格帯でもレチノールが配合順の前方に位置する処方もあれば、価格が高い処方でも配合順位は様々です。価格と配合順位は必ずしも比例しないという点は、成分表から読み取れる客観的な傾向です。
レチノール美容液は、純粋レチノール・誘導体・レチナール・バクチオールという配合されるレチノイドの種類と、オイルベース・水系セラムという処方タイプによって、性格が大きく異なります。価格の高さと配合順位の前後は必ずしも一致せず、プチプラでも配合順位が前方の処方があれば、価格が高くても少量設計の処方もあります。気になる商品を見つけたら、まず配合順位でレチノイドの位置を確認し、レチノールと刺激の関係もあわせてチェックしてみてください。
※ 本記事は全成分表示に基づく成分情報の可視化であり、医学的助言や効能効果の保証ではありません。肌の状態には個人差があります。気になる症状がある場合は皮膚科専門医にご相談ください。